忘れないように

三年前は金曜日だった。
卒業式の準備でバタバタしてて、放課後、やっとパソコンの前に座った職員が間延びした声をあげた。
「何か、大きい地震があったみたいだよ」
私は帰り支度をしていて、へえ?なんて間抜けな反応をした気がする。関東辺りで震度5くらいのがあったのかな?程度にしか思っていなかった。
いつも通りに買い物をして帰宅後、テレビをつけて驚いた。というか、硬直した。とても現実とは思えなかった。
当時はまだ不眠がひどくて、軽い抑うつ状態だった。仕事には行けていたけれど、帰宅後はいつもリビングで毛布を被って動けずにいた。
もちろん、あの日は薬を飲んでも眠れなかった。土日も朝から夜中までテレビをつけて、毛布を被ってその隙間から液晶を覗いていた。自分が屋根の下でぬくぬくとしていることが申し訳なかった。九州まで来てくれたら、雨風を凌ぐ場所くらいは提供出来るのに、と思った。実際には難しかったと思うけど、あの時は本気でそう思っていた。
友人の妹さんは東北で働いていて、その辺りもひどいことになっていた。よく知っている子だったので気になったけど、もしもの場合、家族はどんなに大変だろうと思うと中々連絡できなかった。数日してから友人にメールして、無事だと返事をもらったときは心底安堵した。たくさんの方が亡くなったけど、それを悼むことと知り合いの無事を喜ぶことはきっと矛盾しない。
三年という月日は長いけれど、肉親や親しい人の不在に馴れるには、まだ少し短い。特に災害の場合は自らも被災したうえに周りの人も、日常をも失ってしまうんだから、その辛さを理解することは難しいだろうと思う。
だからせめて祈ろう。今はまだ辛い気持ちでいる人達が、いつか、楽しかった思い出を笑顔で語れる日が来ますように。