真綿で首を締める

結局は気の持ちようなんだろうけど、家族というのはなんでこうも湿っぽくて重たいのだろう。
母が亡くなってからというもの、どうにもいたたまれない。事故でも事件でも自殺でもなく、ちょっと早すぎた死だった。ただ、もっと早く治療を受けていれば、という思いはある。誰も口に出さないけれど。
だから、だろうか。父も、伯母も、いつまでも母に固執している。正直付き合い切れない。もう2年経った。もう充分でしょう? いい加減、解放して。
苛立つ私はさらに腫れ物扱いされて雁字絡めになる。頼むからほっといてくれ。うんざりして盆の親戚宴会をサボったら、毎日伯母と従姉から電話が入る。具合いはどう? ご飯食べにいらっしゃい、顔を見せに来なさい……腹を壊したなんて下手な嘘をついた私も浅はかだったけど、私が厭なのは父だけではない。まるで母の身代わりのように、私に関わりたがる全ての柵が欝陶しい。
客観的には何の問題も無いはずの暮らしなのに、どうしてこんなにも息苦しいのか。
確かに私は身勝手だ。老いた尊属を持て余して疎んじている。だけどもう息が出来ない。あなたたちが握り締めて離さないのは、私の首なんだと、言えたとしても、楽にはならないんだろうなあ…